リボンがほしい
春は、スギ。
やうやう酷くなりゆく鼻詰まり、少し苦しく、風が立てたる埃の、我を痛めつけたる。
花粉症だ。
辛い。
昔から花粉症自体はあったのだが、近頃、というかこの三年ほどでとみに悪化した。
花粉症の症状といえば、鼻づまりや鼻水に代表されるアレルギー性鼻炎や、目の痒み、充血に代表される結膜炎などが一般的である。
私もその程度の症状なら慣れたものだ。
しかしながら、これに別の症状が加わると辛いことこの上ない。
まずは頭痛。
これが厄介で頭がグラグラする。
ひどいときは歩くのもフラフラだ。
次に喉。
咳は出るわ、声は出ないわ、もうどうしようもない。
さらに肌。
体中を駆け巡る痒みと言ったらない。
最後に、これが一番酷いが、眠気。
ふらふらし過ぎて枕から頭が上がらない。
この眠気、普通の眠気とは異なり、いきなりがくんとくるものだから、春期講習のときは大変だった。
話が飛んでたり、問題を解いていなかったりと苦労した。
このようにたくさんの状態異常を抱えているのだが、最近は少し落ち着いたようだ。
それこそ少し前は世界を呪っていたほどだったから、まあ良くなった。
RPG―と言ってもしっかりやったことがあるのはFF7のみだが―で言えば、状態異常が重ねがけされてコマンド入力が出来ないようなものだ。
あれは辛い。
だって「こんらん」とかだと、敵に回復アイテム投げたり自分に攻撃したりするんだぜ?
実に厳しかった。
と、ここで、FF7をやったことがある人ならばわかると思うのだが、タイトルにつながるのだ。
かのゲームでは武器、防具の他にアクセサリなるものがキャラに装着できるのだが。
その中で全状態異常無効という無類の強さを発揮するアクセサリが「リボン」なのだ。
今でも有名なチョコボ頭こと不遇すぎる主人公、クラウドは精悍な青年として描かれているが、その彼のつんつんとした金髪にフリルのついたリボンがふわふわと揺れているだろう光景は、なかなかシュールなものがある。
実際は頭についているわけでもなく、キャラが装着している様子がわかる描写もないため想像なのだが。
そもそもなぜリボンなのか。
他のアクセサリは「〜の腕輪」とか「〜のベルト」とか普通のものなのに。
制作陣は何を考えているのだろう。
とは言ったものの、実はFF7の制作陣はとても茶目っ気があり各キャラにネタ武器が存在する。
あとは槍使いがモップ、拳闘士は軍手、手裏剣使いはスーパーボールなどなかなか多彩なネタを披露している。
皮肉なことにこれらのネタ武器は並の武器より攻撃力や命中率が高い。
物理特化だけれども。
ちなみにクラウドは最終ボス戦後、最後の敵とサシで戦う一幕があるが、そのときに釘バットを装備しておくと、弱ったボスを主人公が釘バットでフルボッコにするといういじめと見紛うばかりにエグい光景を拝むことができる。
そのためだけに(あとは純粋な好奇心)最終ボス戦前でセーブし一度クリアした後、ついでとばかりに他のメンバー全てにネタ武器を持たせて、ボス戦に挑ませたときは実に面白かった。
うわ軍手つよい。
ネタ武器談義に花を咲かせてしまったが、リボンの話だ。
違う、花粉症だった。
…どっちだっけ?
とにかく弟と花粉症の話からリボンの話をしていた時だ。
弟もFF7を攻略している。
私「どうにもこうにもリボンがほしい」
弟「わかる。あれあったら生活が豊かだよね」
私「なぜこの世界にリボンはないのか…」
弟「そりゃ現実だからでしょうよ…。あ、ラッキーカラーブルーだってさ」
私「ブルーリボンか、似合うかね?」
弟「ばーか」
と、ここまでは良かった。
私「ブルーリボン欲しいな。将来やってみるか」
弟「持ってた方がいいかもね。隣の国に喧嘩売るならもっとやろう」
私「は?いやいや、なんでお隣の国の話に?」
弟「いやいや、ブルーリボンだろ?」
私「だからブルーリボンだって」
二人「「……?」」
私「ま、まあ持ってなくてもいいか。たかが冗談だし」
弟「どういう意味だ、この非国民」
私「何喧嘩売ってやがるこのガキ」
二人「「………?」」
結局のところ、私はブルーリボン映画賞の話をしており、弟は北朝鮮拉致被害者を救う会、ブルーリボン運動の話をしてたわけだ。
弟は激しく北のお国が嫌いなのだ。
調べてみてわかったがブルーリボンはいろいろな種類がある。
映画賞や運動、鉄道や船舶に対する賞など多岐にわたっていた。
生半可な知識はいけない、と弟と二人で戒めあった。
嘘のような本当の話である。
たかがリボン一つで喧嘩が勃発しかけ、別なリボンは状態異常を無効にする。
「こんらん」を生む存在ではあるがそれを鎮めるのもまたリボンなのだろうか。
この世界は意外と些細なもので平和になるのかもしれない。
いっそのこと、各国首脳が頭にリボンつけて一緒に踊ったら世界平和になるんじゃねえか(投げやり)。
今の私は世界平和より花粉症をどうにかして欲しいけども。
ではまた次回。